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みずの矯正歯科

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インビザラインはどこまで計画通りに動くのか

 

ーー予測精度、世界的シェア、シミレーションの根拠から考えるーー

 

 

透明なマウスピースで歯を動かす矯正治療はここ10年~20年で一気に広まりましたが、

 

そのなかでもインビザライン(Align Technology 社)

 

世界的に最も利用されているシステムのひとつです。

 

 

2025年時点で、世界2000万症例超が報告されており、

 

クリアアライナー市場でも最大手であることは

 

各種マーケットレポートでも明示されています。

 

 

 

 

つまり、

 

「どう動いたか」「どんな症例が難しかったか」という臨床データが

 

最も多く蓄積しているのがインビザラインだと言えます。

 

 

とはいえ患者さんが1番気になるのは

 

「私の歯並びはマウスピース矯正で治るの?」

 

という点だと思います。

 

 

 

そこで今回は、公開されている研究データと

 

インビザライン特有の『クリンチェック』という設計システム、

 

さらに世界的な利用実績を背景に、

 

‘インビザラインでの歯の移動はどこまで予測通りにいくのか‘‘

 

を整理してみます。

 

 

 

 

インビザラインの基本構造:最初に‘‘全部‘‘設計する矯正

 

 

インビザラインが従来のワイヤー矯正と本質的に違うのが

治療の序盤でゴールまでの動きをすべて設計する点です。

 

 

 

 

 

 

 

iTeroなど3Dスキャナで現在の口腔内をデジタル化し、

専用ソフト「ClinCheck(クリンチェック)」上で

最終的な歯列、噛み合わせをシミレーションします。

 

 

1枚あたり約0.25㎜前後の移動量でマウスピースを連続的に作る

というのがインビザラインの標準的な流れです。

 

 

この最初に治療設計を見せるスタイルは

Align社が長年アライナー症例を蓄積し

ソフトウェアを毎年アップデートをしてきたことで

可能になっています。

 

デジタル、AI、3D プリントを組み合わせたこの設計思想が

他の院内製アライナーや小規模システムとの大きな違いです。

 

 

 

 

予測精度とは何か

 

 

このブログで言う‘‘予測精度‘‘とは

 

「クリンチェック上で計画した歯の移動量に対して、実際にどのくらい動いたか」

 

という意味です。

 

 

過去の臨床研究では、クリアアライナ―による歯の移動の平均的な達成率は

 

おおむね50~60%と報告されており

 

これは「計画をたてたらそのまま100%ピタッと動くわけではない」

 

ということを示しています。

 

インビザラインもこの大きなくくりの中に入ります。

 

 

つまりデジタルは理想像を描けるが、生体は個体差や舌、唇、咀嚼筋

といった外力の影響を受けるため、途中で微調整(リファイメント)

を行うことが現実的な運用となっています。

 

 

この『最初に全部決めるが、途中で差分を調整する』という設計思想は

症例があればあるほどやりやすくなります。

 

 

世界的にシャアがある=途中修正のためのワークフローが整っている

ということです。

 

 

 

 

なぜインビザラインは‘‘比較的‘‘精度を上げやすいのか

 

 

♦症例データに基づいたソフトのアップデート

 

 

Align Technologyは膨大な症例データを持っているため

 

「この動きにはこうアタッチメントをつけた方がいい」

「この順番で動かすと達成率が上がる」

 

といった知見をソフト側に組み込めます。

 

 

これが小規模アライナーとの非常に大きな差です。

 

市場シェアが大きい=世界中から実際の動きがフィードバックされる

ということです。

 

 

♦AIによって干渉チェック、順序の最適化

 

 

最新のインビザラインでは、歯の干渉やアンダーカットを自動で検出してくれるほか、

動きにくい歯を前半ではなく後半に回すなど、ソフト側で

実際に起こりやすい問題を予め避ける工夫がされています。

 

これも大量症例があるからこそできる

 

経験ベースの自動化です。

 

 

 

 

どんな動きが得意で、どこが誤差になりやすいか

 

 

マウスピース矯正は、透明のアライナーが歯を包み込むことで

面全体から圧力をかける=押す力で歯を動かします。

 

 

 

 

様々な研究やメーカー公表資料を見ると、インビザラインを含む

アライナー治療の得意不得意はおおむね次のように整理できます。

 

 

♦得意な動き(予測精度が高めの領域)

 

・軽度から中等度の叢生を並べる(アーチ内で並べる)

 

→力の方向が単純で、1枚あたりの移動量も小さいため計画に近づけやすい

 

・臼歯の遠心移動(ディスタル化)を数ミリ行う

 

→アタッチメント併用で80%前後達成率が上がるとする報告もあり、

マウスピースでも比較的コントロールされやすい動きとされています。

 

・非抜歯での歯列拡大、アーチフォームの調整

 

→外から押すのではなく、デジタルで少しずつ広げるように動かすのが得意

 

 

♦誤差が出やすい、工夫が必要な動き

 

・挺出(歯を縦方向に引き出す動き)

 

→アライナーは歯冠を‘‘包む‘‘構造なので、上方向への力を歯根まで十分に伝えるのが難しく、

ワイヤー矯正よりも達成率が落ちる傾向にあります。

 

・回転(特に犬歯、小臼歯)

 

→歯の形が丸いとアライナーが引っかかりにくく、計画との差が出やすい。

アタッチメントで把持を強めることで改善できます。

 

・トルク(歯根の角度を立て直す動き)

 

→アライナーでも可能になってきていますが、ソフト上で描いたトルクが

そのまま出来るわけではありません。

 

 

こうした『得意』『苦手』がはっきりしていることは

実は患者さんにとってはメリットです。

 

なぜならクリンチェックの段階で予め動きにくい歯を分けておき

治療中にリファイメントをする前提で計画が立てられるからです。

 

 

 

 

予測精度を下げるのは装置の性能だけではない

 

 

もう一つ大事なのは

 

【装置の性能よりも、守られなかった条件の方が精度を落とす】という現実です。

 

 

インビザラインは1日20時間以上の装着が原則とされていますが、

実際にはここを守られないと、計画との差がどんどん開いてきます。

 

これはメーカーも公式に強調していることで、

シェアが大きいからこそ‘‘装着時間不足によるズレ‘‘のデータも多く集まっています。

 

 

また途中で、歯肉の炎症があってマウスピースがしっかりはまらない、

アタッチメントが外れたのにそのままにしていた、

顎間ゴムの使用時間が不足していた………など人側の要因でも予測精度は落ちます。

 

 

つまりインビザラインのソフトの精度は上がっていますが、

それでも装着時間を守ること、アタッチメントを外れたままにしないこと

など患者さん自身の協力によって初めてシミレーションに近づけます。

 

 

 

 

世界的シェアが意味するもの

 

 

世界的なシェアが大きいということは、単に有名というだけではありません。

 

①世界中で似たような症例が治療されている

②その結果がソフトウェアにフィードバックされる

③難しかった動きに対して翌年以降のバージョンで対策がとられる

 

という学習サイクルが確立されているということです。

 

実際クリアアライナ―市場全体のレポートでも、インビザラインを展開する

Align Technologyは依然として最大のプレーヤーとされており、

国、地域と問わず症例が集まっています。

 

日本国内だけのメーカーよりもこの動きは世界的にこうズレやすい

という知識が豊富なので、それを前提にした計画が立てられます。

 

 

 

 

ワイヤー矯正との住み分けは今もある

 

 

ここまで書くと「じゃあ全員インビザでやればいいのでは」となりそうですが、

実際のところ、骨格的な問題が大きい症例、大きなトルクコントロールが必要な症例、

抜歯を伴いアンカレッジを強く利かせたい症例などでは

今もなおワイヤー矯正の方が予測性が高いです。

 

これまでは、抜歯を伴う症例やトルクコントロールが必要な症例では

ワイヤー矯正が第一選択でした。

 

しかし近年では、インビザラインでも条件を整えることで対応可能となってきています。

 

当院でも、症例を慎重に見極めたうえで、ワイヤー矯正に加えて

インビザラインでの治療選択を広げています。

 

例えば・・・

 

抜歯症例でも、アンカレッジ強化用アタッチメントや顎間ゴム、

 

アンカースクリュー併用によりワイヤーに近い精度が得られます。

 

 

 

上図の症例は第二小臼歯と第一大臼歯の間にアンカースクリューを埋入

それを固定源に第一小臼歯を抜歯したスペースを利用しつつ犬歯を後方に動かす

という治療を行っています。

 

インビザライン開始時

 

 

第一小臼歯抜歯後

 

 

インビザライン治療完了予定

 

 

 

マウスピース矯正もアンカースクリューやゴムかけを併用することで

 

かつてはマウスピースでは難しいとされてきた動きが

 

臨床設計の動き次第で対応可能になってきています◎

 

 

 

 

まとめ

 

 

インビザは「動くかどうか」よりも「どう設計して、どう管理するか」

 

 

インビザラインは世界でも最も使用されているクリアアライナ―で

2000万症例超という膨大なデータがソフトの精度を支えている。

 

それでもシミレーション通りに動くわけではなく、平均すると50~60%台、

動きによっては80%近くまでいく、というのが現実的な数字です。

 

得意な動き(軽度叢生、遠心移動)と、工夫が必要な動き(挺出、回転、トルク)

があるので、診断の段階でしっかり見極めてくれる歯科医師を選ぶべき。

 

患者さん側の装着時間、アタッチメントの維持、顎間ゴムの使用時間など

‘‘守るべき条件‘‘が満たされて初めてシミレーションに近づく。

 

クリンチェックをどう描くか、途中でどうリファイメントを入れるか

歯科医師側の臨床力が最終的な予測精度を決める。

 

 

 

つまり、インビザラインは装置が勝手に動かしてくれる矯正ではなく、

 

 

大量のエビデンスがあるプラットフォームを歯科医師がどう使いこなすかで

 

 

結果が変わるタイプの治療と捉えていただくと分かりやすいと思います。

 

 

 

 

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参考文献一覧

  1. How well does Invisalign work? A prospective clinical study evaluating the efficacy of tooth movement with Invisalign (Kravitz et al., 2009)

    • 前歯部401本を対象に、予測モデルと実際の移動を比較。平均精度は約41%。回転・挺出動きなどが特に精度低め。 PubMed+1

  2. Accuracy of Invisalign® on Upper Incisors: A Systematic Review (Gonçalves et al., 2023)

    • 上顎前歯に絞ったシステマティックレビュー。回転・侵入・挺出など動きの種類ごとに精度幅あり。例:垂直移動では精度0%例もあり。 turkjorthod.org

  3. Accuracy evaluation of orthodontic movements with aligners (Bilello et al., 2022)

    • 複数の動きを対象に、アライナー矯正で達成できる移動の割合を調査。傾斜移動・上下移動では高い完了率(92〜93%)報告だが、トルク・挺出・回転はやや劣るという知見あり。 SpringerOpen

  4. Predictability of Dental Distalization with Clear Aligners (Inchingolo et al., 2023)

    • 臼歯の遠心移動(ディスタル化)に特化したレビュー。クリアアライナーによるその動きの予測精度について検証。 PMC

  5. Factors Influencing the Predictability and Success of Invisalign Aligners: A Systematic Review (Al Baqshi et al., 2025)

    • 最近のレビュー。患者の協力度、装置設計、動きの種類などが予測性にどう影響するかを整理。 Cureus

  6. Attachment geometry and clinical predictability in aligner treatment: A systematic review (Ben Mohimd et al., 2025)

    • アタッチメントの形・配置がアライナー矯正での移動精度をどう改善するかを分析した最新レビュー。 apospublications.com

  7. Predictability of tooth rotations in patients treated with clear aligners (D’Antò et al., 2024)

    • 回転移動(特に犬歯・小臼歯)における精度の低さに焦点を当てたレビュー。回転はクリアアライナーでは最も予測困難な動きとされる。 Nature

  8. Factors affecting expansion predictability of clear aligner treatment (de-la-Rosa-Gay et al., 2025)

    • 上下顎の拡大(横幅拡張)におけるクリアアライナーの適用可能性と予測精度を検証。 SpringerLink

 

 

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