横顔の印象はお顔全体のバランスを大きく左右します。
「口元が出ている」
「Eラインより唇が前にある」
「ガタガタも気になるけど抜歯は避けたい」
「後戻りが不安」
こうした悩みは歯並びだけが原因ではありません。
横顔の突出感は
骨格、歯の大きさ、歯槽骨の厚み、噛む力、唇や舌の癖
といった複数の要素が複雑に組み合わさって生じます。
今回のブログでは
「横顔の見え方」
「非抜歯でどこまで口元を下げられるか」
「治療の限界を決める生物学的条件」
について専門的に解説していきます。
目次
♦診断の基本:横顔の改善は‘‘土台の把握‘‘から始まる
横顔の改善度合いは、、治療前にどれだけ正確に現状を把握できているかに
かかっています。
そのため当院では精密検査時に様々なデータを取り
以下のような項目を必ず確認します。
・CT撮影(骨の厚み・歯根の位置)
・側方セファロによる骨格分析
・模型計測(歯列の幅・歯の大きさ)
・咬合診断(奥歯の関係)
・口腔筋機能評価(舌・唇・頬のクセ)
↓精密検査データの一部

特に骨格と歯槽骨の厚みは横顔の改善度に大きく影響するため
正確な診断が欠かせません。
♦噛み合わせ(奥歯)の関係が治療計画の自由度を決める
矯正診断で最初に確認するのは第一大臼歯の噛み合わせです。
上顎第一大臼歯の咬頭(赤い矢印)と
下顎第一大臼歯の裂溝(青い矢印)が
どの位置で噛み合っているかを分析します。
↓ちなみにこの模型は正常咬合
- ClassⅠ:上下顎第一大臼歯の近遠心関係に異常がない=自由度が高い
- ClassⅡ:上顎が前方に位置している=口元が前に出て見えやすい
- ClassⅢ:下顎が前方に位置している=下顔面が突出して見える
奥歯の咬合関係が良好であれば、前歯の動かせる範囲も広がります。
逆に奥歯がズレている場合、
前歯だけを後ろに下げても横顔はほとんど改善しない
ということも珍しくありません。
♦骨格の影響:横顔の突出感の半分以上は‘‘骨格‘‘で決まる

セファロ分析では以下を確認します。
- 上顎の前後的位置
- 下顎の前後的位置
- 顔の縦の長さ
- 下顎角(噛む力)
- 骨格分類(長顔・短顔・平均)
●よく見られる『横顔が出て見える』骨格パターン
- 上顎がやや前方
- 下顎も軽度前方
- 上下顎ともに前方に位置する(上下顎前突)
- 顔の縦幅が短いショートフェイス
特にショートフェイスで噛む力が強い人は
注意が必要です。
●ショートフェイスの特徴
- 前歯が後ろに下がりにくい
- 深い噛み合わせになりやすい
- 骨が分厚く、動かすには強い反力がかかる
つまり骨格的に前方寄りの人は
歯だけを後退させても横顔の改善は限定的となり得る。
♦Eラインは骨格+歯の傾きで決まる
【Eライン】
鼻先と顎先を結んだ線に対して唇の位置がどこにあるかで
顔の調和を評価する指標です。

●一般的な欧米の基準
- 上唇:Eラインより4㎜後ろ
- 下唇:Eラインより2㎜ 後ろ
ただし日本人は骨格的に前方傾向があり、
基準より前方にあっても不自然ではない
とされている。
またEラインは絶対的な美の基準ではなく
骨格が前方な場合、矯正だけで理想値まで下げるのは不可能な場合もある
という点も理解しておく必要がある。
♦歯の大きさがガタガタと口元の出っ張りを生む
歯並びがガタガタの原因は「アーチが狭い」のではなく
歯が大きすぎるケースが多々あります。
上顎前歯の平均幅
- 中切歯(1番)→8.6㎜
- 側切歯(2番)→7.1㎜
歯がこれより大きいと、
- アーチ(歯列の幅)に入りきらない
- ガタガタが強くなる
- 前歯が前方に押し出される
- 非抜歯では引っ込めることができない
という現象が起こります。
アーチが極端に狭いわけではないこの方も
1本ずつの歯の大きさが平均より1.5㎜大きいため
前歯が前方に押し出されています。


♦歯槽骨の厚みは‘‘動かせる限界‘‘そのもの
CT診断で最も重視する項目が歯槽骨の厚みです。
前歯の根を支える骨は非常に薄く、文献的には
- 歯頚部:0.1~0.2㎜
- 根中央部:0.5~0.6㎜
- 根尖部:2~4㎜
という報告があります。
つまり前歯は
そもそも大きく動かすのが困難な構造なのです。
骨を超えて動かした場合のリスク
・歯根吸収

・歯肉退縮

・ブラックトライアングル

したがって
非抜歯で前歯を大きく後退させるのは生物学的に限界がある
という事実を理解する必要があります。
♦舌癖・口呼吸・口唇の圧は後戻りの‘‘最大の敵‘‘
舌の位置と舌突出癖は横顔の出っ張り感に大きく影響します。
●舌癖による影響
- 前歯を前に押し出す
- 歯列がV字型になる
- ガタガタが再発
- 矯正後の後戻りが強くなる
また、
- 口呼吸
- 唇を強くすぼめる癖
- 頬の筋肉の過緊張
これらも歯列を内側に押し込んでしまいます。
●解決策
- MFT
- 保定装置の長期使用
- 鼻呼吸の確立
横顔の改善には、歯の位置だけでなく
‘‘機能‘‘を整えることが必要不可欠です。
MFTをする前

MFTを続けた後

♦非抜歯で横顔を改善したい場合の戦略
「横顔は改善したいけれど、抜歯は嫌だ」という方は多いですが、
非抜歯で行う場合は高度な設計が必要となります。
①親知らずの抜歯
奥歯の遠心移動のスペース作り。
②臼歯の遠心移動
非抜歯で口元を下げるための主軸となる方法。
ただし難易度が高く、期間も長くかかる。
③アンカースクリュー
遠心移動の成功率を高める固定源。
ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも併用可能。
④顎間ゴム
マウスピース矯正の場合、
遠心移動は顎間ゴムの併用がほぼ必須。
⑤IPR
歯が大きい場合は、非抜歯の限界を広げるために有効。
♦なぜ非抜歯には限界があるのか
このような誤解をしている人はいないだろうか・・・
『スペースさえ作れば、歯はいくらでも下げられる』
これはとても危険な考え方⚠
✅実際
骨・歯槽骨・筋機能が動かせる限界を決めている
- 骨が薄い→動かしすぎると危険
- 噛む力が強い→歯が後退しにくい
- 骨格が前方→歯だけ下げても限界あり
- 舌癖がある→前歯は押し戻され後戻り
つまり、安全に動かせる範囲と見た目の希望が一致しないことがある
ということです。
♦まとめ
CTで「現実的にできるゴール」を知ることが最も重要
横顔の改善には
歯並びだけでなく、骨格、骨の厚み、筋機能など多くの因子が関与します。
そのため
- 非抜歯でどこまで下げられるか
- 抜歯が必要なケースか
- 安全な治療なのか
などは、CT・セファロ分析なくして判断できません。
●特に重要ポイント
- 非抜歯で下げられる量には明確な上限がある
- 骨格によっては横顔の改善幅が小さい場合もある
- 舌癖の改善なしでは後戻りが避けられない
- 矯正治療は「できること」「できないこと」を明確に理解した上で始めるべき
‘‘理想の横顔‘‘ではなく‘‘安全に達成できる横顔‘‘
を一緒に目指しましょう。
そのために最も重要なのが
正確な診断とそれに基づく治療計画です。

✅ 横顔・口元の見た目改善に関する研究例
-
Impact of orthodontic‑induced facial morphology changes …(C. Liuら, 2024)
→ 矯正治療により、特に「唇まわり」の横顔の美的印象が改善する可能性を示した研究。矯正によるプロファイルの変化を統計的に確認しています。PMC -
Comparison of the changes in facial profile after orthodontic treatment with and without extractions(Bravo-González L.A. 他, 1997)
→ 非抜歯 vs 抜歯の矯正による顔の“軟組織プロファイル”変化を比較。前歯の位置や唇の突出度、下唇の位置変化などを分析しています。ResearchGate -
Facial soft tissue changes after orthodontic treatment(S. Aksakalli 他, 2014)
→ 顔の軟組織(皮膚・唇・頬など)が矯正によってどのように変化するかを、写真分析で検証した研究。歯および骨格変化だけでなく、軟組織全体の変化にも言及。Lippincott Journals
複数の研究で「矯正により唇まわりの横顔の印象が改善する」可能性が示されており(Liu 2024, Bravo-González 1997, Aksakalli 2014)、
一方で「必ず満足できる横顔になる」とは保証されず、骨格や軟組織の反応には個人差があるという報告もあります(Singh 2023, Psomiadis 2023)。
よって、治療前に骨格・軟組織の状態を正確に診断することが重要です。
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